□■１セット = 10冊 での販売となります．（１冊 8ページ）■□

明けない夜はない 今こそ変えよう　日本の精神保健福祉
2018年９月15日 発行
編　集　映画　「夜明け前　呉秀三と無名の精神障害者の100年」上映実行委員会　
発　行　やどかり出版


　日本の精神医学の先駆者とされた呉秀三をご存知でしょうか．今から100年前に，当時の精神障害者の実態を称して，「この病を受けたるの不幸のほかに，この国に生まれたるの不幸を重ぬる」と言い放ちました．古めかしい言い回しですが，その内容はそっくり今に通用します．
　
　呉先生が時空を超えて今の精神科医療や精神障害者の実態を見たらどう思われるでしょう．精神科病院での超長期入院政策は一向に改まらず，加えて身体拘束や保護室監置の乱用などの人権侵害の事実……地域生活の支援策も不十分で，精神障害者の多くは，ぎりぎりの生活水準である相対的貧困線以下におかれ，結局は親を中心とした家族へ依存した生活を余儀なくされています．
　
　残念ながら，精神医療制度の水準は，欧米などの先進諸国と比べて，また国内の他の診療科目と比べても著しい格差があり，そのことは意外に知られていません．精神障害者の社会参加のための支援策もまた，他の障害よりずいぶん遅れをとっているのです．
　
　呉先生が指摘された「この国に生まれた不幸」が，100年たっても一向に改革されていない現実を嘆き，怒り，一刻も早く改革をと私たちに迫られるのではないでしょうか．
　
　呉先生に叱咤されるまでもなく，早急に抜本的な改革が必要です．政治や行政のリーダーシップが必要であり，私たち1人1人の問題として，社会全体が精神保健福祉の問題に正面から向き合うべき時です．「明けない夜はない」のです．
　
　本パンフレットが，世界から周回遅れの精神保健福祉の現状であることを多くの人たちに知らせ，精神医療と精神障害者の福祉政策の近未来を切り拓くうえで，役立つことを願っています．

　藤井　克徳（日本障害者協議会代表）